愛知県(赤味噌県)にいると言われる妖怪一覧

  • オクリビ

火の怪。送り火。宝飯郡一宮村八名井と江島との境、掘割の傍らに出る怪。人が通ると提灯のような火になって金沢村の榎の傍らまで送ってくる。その榎を切ってからは出なくなったという。

 

  • オトラギツネ

動物の怪。長篠の決戦を櫓ろの上で見ていたが、流れ弾で左の目を失った。その後、信州犀川の岸で昼寝をしていたら、対岸から狩人に撃たれて片目片足となった。この狐が憑くと挙動が怪しくなり、合戦の話を始める。

 

  • カタアシジョウロウ

山の怪。片脚上掾B八名郡山吉田村(南設楽郡鳳来町)栃の窪からはだなしの山にかけての山中に住む怪。狩人の獲物を奪う。また山に紙緒の草履をはいていけば、必ず片方を取られるともいった。

 

  • カッパ

水の怪。河童。三河の某地─清水権之助という人の領地で、駒引きに失敗、手拭の端を赤く染めた人には害をしないと約束して許された。それ以来、付近の人は我も我もと紅手拭いを携帯することとなった。三河国設楽─カワッパという。強力の勇者と組み合って押さえつけられた。突かれそうになったので、子孫に水難を免れさせると約束して許された。カワッパは一類だから必ず約束は守るといい「ヒヤウスヘハ約束セシヲ忘ルナヨ川立チ男氏ハ菅原」という歌を教えた。水に入るとき、この歌をとなえれば捕られないという。北設楽郡本郷町本郷─駒を引いたが馬の力が強く、尻尾につかまったまま人家へ。厩の入口の柱に縛られたが、下女がうっかり水をかけたので、縄を切って逃げた。同郡三輪村川合─亀淵にかむろ髷の少女に化けて出、大力の男に火を貸せといった。男が大煙管キセルで頭を打つと、男のほうが失神した。北設楽郡下津具村中之沢─馬の尻尾に食いついたまま離れなかった。棒で打とうとすると椀を貸すと約束して許された。村で重宝していたが、ある人が一つ壊して返さなかったら止んだ。下津具郡二子島─駒引きに失敗、殺されそうなところを、頭の窪みに水を入れて助けてもらった。礼に、毎日一籠魚を届けた。北設楽郡富山村─旧家の竈の上に昔住んでいて、農作を手伝ったり魚を取ったりしていた。蓼を食わせられ血をはいて竈をかけ下り、行方不明になった。北設楽郡振草村小林─旧家で田植えの手伝いをしたり膳貸しをした。ゴンゲノボウ(五月祭)には上座に一人前の膳を置いた。のち家人が面倒くさくなり、蓼を混ぜて食わせたら逃げ、その家も傾いた。葉栗郡浅井町浅井─河童相伝の秘薬を持つ接骨医がいた。難しい患者が来た時、その家の池を一巡りすると河童が出てきて処方を伝授した。

 

  • カワコゾウ

水の怪。川小僧。知多郡日間賀島。尻子を抜くので、水死人は尻に穴があいている。

 

  • カワババ

水の怪。北設楽郡振草村で河童のこと。

 

  • カンタロウビ

火の怪。勘太郎火。名古屋付近。二つの火が同時に出る。勘太郎とその婆の火という。

 

  • キツネノカイ

動物の怪。狐の怪。名古屋。天明ころ、御女郎狐という古狐が、寺の小僧に憑いて官位を望んだ。寺では京に申し述べ、白雪大明神という官位を受けたという。小折村では相撲をとっていた子狐が人に気づいて川に落ち、死んだ。親狐は一つ目に化けて人に復讐したという。

 

  • クビツリダヌキ

動物の怪。首吊り狸。髪結の男と親しくなり、男に心中を承知させた淫乱放蕩の女がいた。榎の枝に腰紐をかけ、両端を互いの首にまいて死のうとした。男は木の股まで吊り上がって死に、女は地面に足がついて死にそこなった。夜が明け、人が見ると、死んだのは狸で、本物の男は約束の時間に遅れていったのだという。

 

  • グヒンサマ

火の怪。天狗の異名だが、知多郡では鬼火の一種をグヒンと呼ぶ。

 

  • コメカシ

音の怪。幡豆郡佐久島(蒲郡市)。海岸の藪でガシガシと、米をかしたり、小まめかしたりする音をさせる。カスは水につけて磨くこと。

 

  • ザシキコゾウ

家にいる怪。座敷小僧。北設楽郡本郷村の酒造家にいた。奥座敷に住んでおり、夕方、雨戸を閉めに行くと見ることがあった。十歳くらいの童子だったという。家が没落していなくなった。

 

  • ザシキボウズ

家にいる怪。座敷坊主。鳳来郡鳳来町門谷。坊主頭の按摩のような姿で、枕返しをする。

 

  • シュゴジンサマ

山の怪。天狗。三河地方でいう。毎月七日は山に入ることを忌み、この日に木を伐ると守護神様に罰せられるという。特に十月七日にはそのお祭りをする。守護神様は賑やかなことはお嫌いといって、山小屋では最も静粛にする。守護神様に石を投げられたとか、さらわれたという話もまれではない。

 

  • タヌキノカイ

動物の怪。狸の怪。池鯉鮒村(知立市)─同村南の亀浜の酒造家の家に大徳寺和尚と名乗って来て、いろいろ書をなし印まで押した。百三十日ほど逗留した。のち大徳寺に問い合わせたが覚えがないという。書を送ると、印は夜中に狸が盗んだものという。しばらくして大津で犬に食い殺されて正体を現した。中山道─名古屋飛脚が雪隠に入っていると隣の灰部屋に狸がいて、片手は柱に、片手は頭の上で人を招くようなかっこうをしていた。そこに旅人が通り、「にっくきやつ」と声をあげた。あとで聞いてみると、大坊主が出たので刀を抜いて払ったところ消えたという。狸の気がない脇から見る人の目には正体がわかるものらしい。春日井郡大永村では空き家に狸が住み込み、人が住むと美しい女に化けて出た。犬に追われると股ぐらから泡のような白いものを吹き出させた。それは生綿百目くらいの打ち綿ほどの大きさになったという。

 

  • タヌキビ

動物の怪。狸火。勢田在高田村。人々を脅し、野辺に大いに火を上げて村中が火消しに来ると消え失せさせたりした。

 

  • ダリボトケ

亡霊の怪。北設楽郡の花丸峠下の路傍にこの名の墓石がある。寛永のころ行倒れになった人を埋葬したもので、ここを空腹の旅人が通ると急にだるくなり、足がしびれて歩行に悩む。この時、木の葉でもなんでも一口食べれば治る。同郡田口町和市から振草村小林へ越す峠にも、岩茸採りの餓死した人を祀ったという一基の墓があり、やはりダリボトケ、またはダリガミといって同種の話がある。

 

  • ツトッコ

動物の怪。ツトヘビともいう。槌の形または苞の形をしているという。野の槌という蛇の名から出たか、またはこれと混同した言い伝えである。南設楽郡では、蛇の鎌首をもたげたところを打てばその首は直ちに飛び去る。それを探して殺しておかないと、のちにツトッコという頭ばかりの蛇になるという。

 

  • テングビ

火の怪。天狗火。南設楽郡長篠村横川。朝の草刈りに行った男が満天の星の下で見た。灯が一つぐんぐん動き、二つになったかと思うと次々に増えて山いっぱいにひろがった。そしてまた一つになったという。

 

  • テングワライ

山の怪。天狗笑い。設楽郡。天竜川の東岸で、雪が二尺積もった朝、亀の甲山からとほうもない笑い声が響いた。

 

  • テンビ

火の怪。天火。渥美郡では、夜、自分の行く手が急に明るく、昼のようになる怪をいう。

 

  • ニュウドウボウズ

道の怪。入道坊主。見越入道と同じ。南設楽郡作手村では、これを見たという。初めは三尺たらずの小坊主で、近づくにつれて七、八尺から一丈にもなった。まず、こちらから見たぞと声をかければいいが、むこうから言われると死ぬという。

 

  • ネコノカイ

動物の怪。猫の怪。名古屋伝馬町。入浴のあと竿にかけておいた手拭が、いつのまにか縁側に捨ててある。ある夜、気配に息をひそめていると、五、六匹の猫が集まって、各々が手拭いをかぶって踊りあかしたという。夜明けになにかの話し声がしたと思うと解散となった。また死んだ老婆に憑いて、かばやきが食いたいなどと注文し、さんざんに食い散らしたという。

 

  • ヒオカセ

道の怪。火を貸せ。北設楽郡の某地に出る。昔、鬼久左という、大力の男が夜道を行くと、先に行くおかっぱの女の童が振り返って火を貸せといった。煙管で打ちすえようとすると、かえって自分の方が気絶してしまった。淵の神の子であったろうという。

 

  • フッコ

動物の怪。北設楽郡で、猿、山犬、狐等の古びたものをいう。

 

  • フトンカブセ

道の怪。布団被せ。佐久島に出る。ふわっときてスッと被せて窒息させるという。

 

  • フナユウレイ

海の怪。船幽霊。全国各地の海村で聞く。これに会うと杓子を貸せというので、杓子の底を抜いて貸さないと水舟にされるという。またむこうからこちらの舟と同じような舟がやってくるという。幡豆郡佐久島では、その舟は帆柱のセミ(滑車)がないという。これに出会ったときは、舟たで(腐朽防止のため舟底の外を焼くこと)に使った火箸で舟を撫でるとよいという。

 

  • マドウクシャ

動物の怪。知多郡の日間賀島で、死人を取りにくる百年以上も年経た猫をいう。死人の上に、目の多い箴をあげて防ぐ。

 

  • ミコシニュウドウ

道の怪。見越し入道。大浜茶屋から名古屋に向かう途中の烏頭村というところあたりに出た。三河吉田町(豊橋市)の商人がここを夜通ると、身の丈、一丈三、四尺、目の光は百錬の鏡のような大入道がこちらに歩いてくる。商人も馬子も地に伏していると、化け物は去った。商人はなんとか名古屋に着いたが、発熱がひどく、十三日目に死んだという。

 

  • モウジャブネ

海の怪。亡者船。知多郡日間賀島では、盆の十六日に亡者船が来るといい、これに会ったら髪の毛を燃やすか、魚を焦がすとよいという。

 

  • ヤマウバ

山の怪。山婆。北設楽郡にヤマウバが来て、石臼や篩を借りた話がある。入鹿村。山のへこんだ場所に灯火をこうこうとたいて、鏡台を前に鉄漿をつけていた。美麗たとえようもないが、背は一丈あまり、梳ずらない髪は岩下に垂れていたという。

 

  • ライジュウ

動物の怪。雷獣。知多郡の寺に雷と共に落ち、塔に打たれて死んだ。鼠色で犬ほどの大きさだった。